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「見て待っててくださいね。すぐにメートルが来ますから」
メートル? まさか、長さ意味ではないだろう。もしかしたらフランス語のマスターの意味かもしれないと思った。
一番近いショーケースを見て、さっき以上に驚いた。
中には、丁寧に作られたアクセサリーが美しく並んでいた。
「素敵なお店だね」
「すごいだろ。全部、このショップのご主人……メートルが作ったんだ」
「粋はどうしてこんな隠れ家みたいな素敵なお店を知ってたの? まさか……」
山森梓に聞いたとか? は口には出さなかったが、粋には伝わったようだった。
「広瀬に聞いたんだ。皆でいる時に、寿に指輪をプレゼントしたいんだけどって相談したら教えてくれた」
皆に相談しなくても、とは思ったが、それも口には出さなかった。
それよりも、粋が指輪を贈りたいと思ってくれた気持ちが嬉しかった。
「”やっぱりコトブキだ! また会えたね”」
聞き覚えのある声が二人の間に割り込んできた。
つい最近聞いたばかりの声だ。
振り返ると、体格の良いおじいさんと一緒にジェヒがいた。
「”ジェヒ! 何であなたがここにいるの?”」
何が何だか分からない粋の目線は二人の間を行ったり来たりしていた。
「粋、英語は?」
「分かる。英会話習ったから。待って、こいつジェヒ?」
「”日本語はあまり分からないんだ。英語でしゃべってよ。ああ、この二人は僕の祖父母だよ。予約ノートの名前をこっそり見てまさかとは思ったけど、本当にコトブキに会えるとは思わなかった”」
近付いてきたジェヒが寿にハグしようとした。でも、それは粋に阻止された。
「”ここは日本だ。ハグは一般的じゃない”」
たどたどしいがちゃんと英語だった。初めて聞いた粋の英語がすごくこそばゆかった。
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