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「婚約指輪でしたら、ダイヤモンドか誕生石でもいいと思います。お誕生日はいつですか」
「三月です」
「フランスでは三月の誕生石はルビーなんです。日本では七月の誕生石ですね」
粋と寿は顔を見合わせた。
寿の誕生月は三月で、粋の誕生月は七月だった。
「ルビーがいいです。ルビーでお願いします。デザインはこんな感じで、装飾も少なくてシンプルなものがいいです」
メートルは手袋をはめると、ショーケースから一つの指輪を出した。
「こんな感じはどうでしょう」
「素敵……」
思わずため息が出た。
メートルが見せてくれたのはサファイアの指輪だった。
中央にサファイアを配置し、リングに沿ってダイヤモンドをあしらったリングは、華奢でとても可愛かった。
「はめてみてもらえますか」
右の薬指にはめようとしたら、粋に取られて、左の薬指にはめられた。すごくくすぐったい。
「緩いですね。七号ぐらいですかね。サイズを見ましょう。ちょっとこれを……うん、七号ですね。これよりももう少しリングの厚みを薄くしましょう。芹沢さんの指に合うと思います。石は……そうだ、これがいい」
奥に行ったメートルはすぐに戻ってきた。
手には、薬をいれるような透明の袋を持っていた。
その袋から出てきたのは、小さな赤い石だった。
「非加熱のルビーです。この間、手に入ったばかりで。どうでしょう。ほら、ぴったりだ」
サファイアよりも少し小さいルビーは、奥深い吸い込まれそうな赤い色をしていて、気高く煌めき美しかった。
「綺麗……」
言葉が出ない。
元々、アクセサリーや宝石は身に付けないほうだ。でもこれは、本当に素敵だった。
完成までには半年かかるという。とても人気らしく、メートル一人でやっているから仕方がなかった。
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