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また会う日まで 寿・現在
手荷物を預けて、早朝からやっているカフェで皆で朝食を摂った。
錬と将は粋にベッタリで、寿は粋の隣は座ることすらできなかった。
あと一時間。
あと一時間後には、保安検査場の向こうに行かなければならない。
昨日は、六人でテーブルを囲んで、とても楽しい夜を過ごした。
粋と同じ部屋がいいという錬を諌めてくれた将のお陰で、どうにか二人の時間は確保できた。
甘く蕩ける時間はあっという間に過ぎ、六時にはチェックアウトをして空港に向かった。
さっきから、将も錬もサッカーの質問を粋に投げていた。一人っ子の粋は、弟たちをとても可愛がってくれた。
弟たちを可愛がってくれるのは嬉しい。
二人の時間は昨日もおとといもいちゃいちゃして過ごしたし、思い残しはない。それでもやっぱり、できれば近くにいたいと思う。
「お手洗いに行ってくるね」
寿は店を出た。トイレはどこかと辺りを見回していると、粋が来た。
「俺もトイレ」
店を出てしばらくして、粋の指が寿の指に絡んだ。
「七時半過ぎには行くんだよね。あと三十分ちょっとか。どうして楽しい時間て、すぐに過ぎて行くんだろうな」
「粋、寂しい?」
「めっちゃ寂しい。マジでしんどい」
わざとらしく大きな溜息を吐いて肩を落とす粋がおかしかった。
「嘘っぽいなー。本当は、やっと寿がいなくなったって羽を伸ばすんじゃないの?」
「羽なんて伸ばさないよ」
粋の声は少しもふざけていなかった。
寂しい気持ちを隠すために強がって、粋を貶めたことを後悔した。
「……分かってる。私も寂しいよ。でも頑張るね」
「うん。何かあったらいつでも電話してきて。俺で良ければ愚痴を聞くから」
「粋も、初めての海外生活でホームシックになったら電話して。すぐに会いに行くよ」
通路の影で、粋に抱き締められた。
「すぐ会えるよ」
唇が重なってすぐに離れた。
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