帰国  寿・現在(二)

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帰国  寿・現在(二)

 久しぶりの成田空港は何も変わっていなかった。到着ロビーを出ると、いつもの場所に芙季は立っていた。 「芙季さんただいま」  スーツケースを引いて近寄る寿を芙季は腕組みをして呆れたように見ていた。 「どういう風の吹き回し? あんなに日本には帰らないって駄々こねたくせにいきなり帰国するって」 「状況が変わったの。詳しくは車で話すよ」  スーツケースは芙季が引いてくれた。芙季は社長と言うよりも、寿にとって姉みたいなものだ。寿も芙季には甘えたし我が儘も言えた。 「みんなは仕事?」 「咲季は雑誌、涼香はミュージックビデオの打ち合わせ。高倉は涼香の付き添い。ということで、あなたのお迎えは私ってわけよ」  アテーナーは小さな小さな事務所だ。所属モデルは三人、スタッフは社員が二人とアルバイトが二人だ。  三人の中で稼ぎ頭は寿で、当然芙季が付きそう機会が多かった。
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