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待ちぼうけ 寿・現在(三)
──あんたはスキャンダルを起こして事務所を廃業させるために帰ってきたの?
そう怒られると思ったのに、上がった眉毛は元に戻っていた。芙季は電子タバコをくわえると、窓を少し開けた。
「初耳よ。いつから付き合っていたの?」
「高校二年生から。正味二年間てとこかな。御坂はもうユナイテッドに入団してたから、あんまり会えなかったけど。留学を勧めたのも御坂だよ。御坂がいなかったら、私は芙季さんとも知り合えなかった」
窓の隙間から入ってくる風を受けて、寿は目を細めた。
「ん? 二年間てことは別れたの? 現在進行形って言ってなかった? 遠距離が原因で続かなかったの?」
「私は別れたつもりはないよ。ああでも、御坂の中ではとっくに見切りを付けてたのかもね。だから、留学しろってしつこく勧めてきたのかもなあ」
芙季の眉間に皺が寄った。疑問に思っていると手に取るように分かった。
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