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 純愛だぞ、そう反論したタイミングで、小さな声が後ろから聞こえた。 「(うち)も……ありがとう」  振り向くと、5つ上の段からナルナルが俺を見下ろしている。 「あのね……うちの小学校、全員リレーがあったの。(うち)あれ、大嫌いだった。一生懸命走ってるのに何人にも抜かれて、みっともないとこみんなに見られて。お前のせいで負けたって、運動会の話題になるたびに言われるし」  ナルナルは、女子の中でも特別小柄だ。学校指定の上履きにサイズがなかったとかで、小学生みたいなバレエシューズを履いている。 「今年は(うち)、クラスのお荷物じゃない。それだけで嬉しい」  あごを引いて、ナルナルがはにかんでいる。下の段にいるおかげで、俺には、うつむきがちな彼女の表情が初めてちゃんと見えた。 「禄太くんと真麻ちゃんのこと応援してる。けど、(うち)も優勝狙ってるからね」 「えっ、俺ら仲間では?」 「団体戦(スプラ)では仲間だよ。でも個人戦(ぷよ)ではライバルでしょ」 「まぁ、そうだけどさぁ」  eスポーツ部門は、クラス対抗の団体戦に「色塗り陣取りゲーム」、個人戦に「落ちものパズルゲーム」がある。それぞれの優勝者は表彰され、運動会のチーム得点にも加算されるシステムだ。
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