REBECCA フレンズ

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 高校の入学式の日、緊張とワクワクがごちゃまぜで固まってしまったわたしに声をかけてくれたあの子。きゅっと大きな目が印象的で美少女と呼ぶには少し野暮ったい女の子だった。  パツっと眉毛の上でまっすぐに切られた前髪と凛々しい眉毛を思い出す。 「ねえどこ中出身? 友達になろ!」  名前順に並んだ前後の席で、振り返り顔を近づけてきたちかちゃんはニコニコとよく笑う女の子だった。人見知りのわたしは押されるように、うんと頷くのが精一杯だった。  ちかちゃんはおとなしいわたしと違ってすぐにクラスの人気者になった。先輩たちのウケも良くて、廊下でよく声をかけられていた。  だけど約束通りわたしのことを一番の友達にしてくれて、いつもいっしょにいたんだっけ。  眩しくて憧れて大好きだった友達。学年が上がっても同じクラスになれてわたしたちは親友だった。  隠れ家を見つけたのは高三になってからのことだった。  受験勉強のプレッシャーに追われて、わたしたちは逃げるように居場所を欲しがった。  あの頃はあちこちに原っぱがあった。背丈より高い雑草をかき分けてぽっかりと広い空間を見つけたのは偶然だ。 「うわ、なにここ! 隠れ家のちょうど良くない? うちに敷物あったはず。それで囲ってさ、2人だけの基地を作ろうよ」 「うん、いいね、そうしよう」  それからせっせと好きな漫画やジュースやお菓子を運んでは、放課後をそこで過ごした。  まるでテントのように囲まれた空間にはわたしたちだけの濃厚な密度が詰まっている。  ちかちゃんがラジオを持ってきて音楽をかけた。わたしたちの閉塞を代弁するかのように自由になりたいと、わたしはわたしなんだと熱く叫ぶ歌詞に身を任せる。 ―――どこでこわれたのohフレンズ うつむく日は見つめ合って  ちかちゃんとふたりきりでいると甘酸っぱい気持ちに包まれた。  大好きで、もっと一緒にいたくて、手を握り合ったら無敵になったように心強くて。  ちかちゃんもきっと同じだった。わたしたちは隠れ家に潜り込むといつも触れ合うようになっていた。まるで何か怖いものから逃げるように、ふたりだったら立ち向かえる勇気が出る気がするように。 「ねえ、」とちかちゃんがかすれた声を出した。 「ん?」とわたしもちかちゃんを見つめた。思いつめたような二人の視線が絡まった。
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