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静かになったアトリエの鍵がひとりでに開いた。
「お邪魔しまーす」
軽い調子で遠慮なく部屋に入ってきたのは、絵都の同居人である白瀬だった。
その手にはコンビニ袋を提げている。
放っておくとご飯も食べない絵都に、昼食を届けに来たのだ。
「あーららー。また盛大に壊したねー」
部屋の中に入るなり、白瀬はキャンバスの散らばった床を見回す。
ビリビリになったキャンバスが、床を埋め尽くす勢いで散らばっていた。壁にも物を投げつけたような傷が増えていた。
「この部屋返すときの修理費、高くつきそうだよねー」
白瀬は呑気なことを言いながら、壊れたキャンバスを避けつつ奥のベッドに近づいた。
絵都は毛布にくるまって暗い目をしていた。キャンバスを見下ろしているようで、その実瞳には何も映していない。
白瀬は絵都の正面にしゃがみ、彼の前でヒラヒラと手を振った。
「やっほー、エトくん。俺とご飯にしない?」
「いらない」
「そう言わずにさー。ほらこれ。エトくんの好きな梅おにぎりだよ。こっちはマヨカルビでー、こっちは鮭。サンドイッチも唐揚げ弁当もあるよー。デザートはプリン、シュークリーム、マカロン、ドーナツ!」
次々に袋から出したものをベッドに並べる。
虚ろな目をしていた絵都は、ようやく白瀬の姿を目に映した。
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