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輪廻Ⅱ『眉墨』
他人に自分の何処が一番嫌いかと問われると『眉毛』と答えている。その女優が若いメークを追いやった。
「いいのよ、彼女眉墨だけは自分でやるの」
女優にたしなめられた若いメイクがベテランに慰められた。
「でも監督から、彼女自分でやると濃いからって」
「いいの、それを彼女に言いたければメイクで彼女を抜きなさい」
ベテランに蹴落とされた。女優の名は加賀礼子42歳、悪役では右に出る役者はいない。あれだけ悪女を演じるのは性根から悪女でなければ出来ないだろうとおかしな人気が出ていた。若いメイクは島崎香織21歳、プロのメイクになりたくて中学を出てから美容院で働き我流でメイクを習得してきた。そして認められてプロになって加賀礼子の付き人兼メイクとなった。
「香織、顏赤い、赤過ぎる、あたしは赤鬼か?」
「すいません」
すぐに直す。一日中礼子に叱られている。
「礼子さん、新幹線がこの雪で止まりました。車で東京に向かいます」
ロケバスのドライバーが報告した。
「新幹線動けないのに車で大丈夫ですか?」
香織がドライバーに訊き返した。
「どうしても明日の午前中に東京入りしなきゃならない。行くしかないんだよ」
ドライバーも半分自棄になっていた。本来この天候ならなら移動は中止となるのが当然であるが明日の舞台には間に合わせなくてはならないと関係筋から圧力が掛かっていた。
「いいんだよ香織、あたしが行かなきゃ芝居にならないだろう。辛いねえ、悪女は」
礼子が笑った。
「でも吹雪で前が見えない」
香織が食い下がる。
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