輪廻Ⅱ『眉墨』

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「こりゃご挨拶だ。私はあなたを助けたつもりだが」 「あたいの胸を触っていただろ」 「助ける時に触れただけだ。触っちゃいない」  香織が地元の消防団を連れて来た。 「礼子さん、どうやって車から出たんですか?」  人の力で動かせるはずはない。 「この痴漢が助けたと言ってるけど信用ならないね」  礼子が金原を指差した。 「そんなことより病院だ」  消防団が玲子を担架に乗せた。 「運転手はどうなりました」 「天国に行きました」  金原が答えた。 「天国ってあんた、そんなことどうして分かる?」 「いや、間違いない、上がっていくのを見ました。彼の天命です」  消防団は金原を相手にせず礼子を車に運んだ。 「あんたも来てください。警察で話してください」  金原の同乗を指示した。 「後で行きますよ、もう一件入ったので片付けてから伺います」 「あんた、逃げるのか?」  吹雪の中に金原が消えた。  加賀礼子は入院している。出演予定は全てキャンセルとなった。礼子がいない舞台やドラマでは物足りないとファンが嘆いていた。いなくなり余計に礼子の存在が浮き上がった。 「先生、あたしいつまで入院するの」  入院して二週間になる。未だに挟まれた両足は動かない。      
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