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「こりゃご挨拶だ。私はあなたを助けたつもりだが」
「あたいの胸を触っていただろ」
「助ける時に触れただけだ。触っちゃいない」
香織が地元の消防団を連れて来た。
「礼子さん、どうやって車から出たんですか?」
人の力で動かせるはずはない。
「この痴漢が助けたと言ってるけど信用ならないね」
礼子が金原を指差した。
「そんなことより病院だ」
消防団が玲子を担架に乗せた。
「運転手はどうなりました」
「天国に行きました」
金原が答えた。
「天国ってあんた、そんなことどうして分かる?」
「いや、間違いない、上がっていくのを見ました。彼の天命です」
消防団は金原を相手にせず礼子を車に運んだ。
「あんたも来てください。警察で話してください」
金原の同乗を指示した。
「後で行きますよ、もう一件入ったので片付けてから伺います」
「あんた、逃げるのか?」
吹雪の中に金原が消えた。
加賀礼子は入院している。出演予定は全てキャンセルとなった。礼子がいない舞台やドラマでは物足りないとファンが嘆いていた。いなくなり余計に礼子の存在が浮き上がった。
「先生、あたしいつまで入院するの」
入院して二週間になる。未だに挟まれた両足は動かない。
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