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「でもどうしても信じられないんです、礼子さんが抜け出たことが、もし力持ちで礼子さんを引っ張り出したら両足が切れてしまいます」
香織は神がかった力が働いたとしか考えられなかった。
「その通り、私が仙人だから助け出すことが出来たんだ」
それでも香織は信じられない。
「じゃあどうしてあそこに居たんですか?」
香織が食い下がる。
「彼女が祈った。その祈りが私に通じたんだ」
「あたしが何て祈ったか正確に答えてもらおうじゃないの」
礼子が香りを後押しした。
「そうよ、礼子さんの祈りを教えて」
二人の攻めに金原は笑ってしまった。
「しょうがないな」
金原は両手で顔を覆い呪文を吐きながら広げた。脳の記憶を額のスクリーンに映し出した。
「神様、今度生れてくるときはお嬢さん役が似合う女にして下さい。悪女は地獄ですか?ごめんなさい」
そしてまた顔を覆った。手を開くとスクリーンは閉じていた。礼子と香織は声を失っていた。
「特別だからね、君達があまりにしつこいから」
金原が頭を掻くと癪が飛び出して来た。礼子の足元に落ちたフケの塊を突っつく時羽が礼子の踝に触れた。
「気持ち悪っ」
足を引こうとしても動かせない。
「癪、戻れ」
癪が窓ガラスの罅から消えて行った。
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