輪廻Ⅱ『眉墨』

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「お前も変わってるよ、どうしてあたしなんかに付いて来たんだい。大女優から声が掛かった時にどうして行かなかったんだい。お前は自分の一生を台無しにしたんだ。親孝行し損なったんだよ」 「礼子さん喋らないで」  メイクの最中である。眉墨以外のメイクは終わった。礼子は入念にチャックしている。 「いいだろう」 「ありがとうございます」  スタッフが楽屋に入って来た。 「礼子さんそろそろです」 「客入りはどうだい?」 「正直前売りががっちり残っていたんで心配していたんですが、喜んでください。満員です」 「やった、礼子さん凄い、礼子さんのファンは隠れファンだから前売りは買わない、お忍びのように来るのよ」  香織が飛び上がって喜んでいる。スタッフが一礼して楽屋を出た。 「さあ礼子さん時間がありません、眉墨をお願いします」  礼子はこれまで眉墨をメイクにひかせたことはない。香織がペンシルを差し出した。 「お前が塗るんだよ」 「えっ」 「お前に塗ってもらいたいんだ」 「礼子さん、はい」  礼子の眉に触れるのは初めてだった。 「いいかい、最初の科白は『あたしが悪女だって、笑わせるんじゃないね』だよ。それに負けない眉を引いておくれ」  香織も科白は全て記憶していた。礼子になったつもりで眉を引く。    
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