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俺と朝美の幼なじみ関係を、転校生の立場から見ていた雅志の目からは、俺と朝美は両想いだったように見えたと言う。俺には全然そう思えないし、自信がない。
でも、俺の方はやっぱり、あいつのことが好きだったんだ。小学生の恋心なんてたかが知れてるけどな。
「もう取り返しがつかないってわかってるけど、朝美に会って謝りたいし、告白もしたい」
「僕も浩人も、振られるってわかった上で一緒に彼女を追いかけて告白なんてさ。こーんな無意味で虚しい旅の目標も他にないよね」
「だよなぁ」
どんなに虚しくたって、俺にも雅志にも、向こうに「帰りたい家」なんかない。だから心底、気楽なもんだ。
とはいえ……いくら元の世界に居所のない俺達でも、たったひとりで異時空なんかに飛ばされたら、とても「気楽」なんかでいられなかっただろう。
あいつへの感情っていう意味では俺達って普通に「恋敵」になり得るんだが、そうだとしても。これから俺達の生きるこの世界に雅志と一緒だっていうのは、お互いにとって「不幸の中の幸運」だったのかもしれないな。
俺達は水晶の小船に乗って空を駆け、排気ガスの汚染のない美味くて心地よい風を浴びながら進み続ける。人の争いもない穢れなく美しい世界なのは間違いないんだろうけど……元からこの世界にいる住人にとって、はたしてこの世界の何が楽しいんだろう。俺にはよくわからない。旅の途中、人のいる集落に通りがかることが出来たなら、下船してじっくり話を聞いてみたい。
俺達の物語はここで終わり、結論は見えない。俺と雅志の「告白」の結果がどうなるか、それは俺達を観測した人々の思うままに委ねたいと思う。
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