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ふたりの決闘
自分以外誰もいない、静かな部屋の中。
北の国の第二王子、アルコルは瞼を閉じる。
これから行われるのは、次の王を決める神前決闘。
相手は第三王子のミザル。
アルコルは正妃のふたりめの息子。
ミザルは側室のひとり息子。
同い年のふたりは、まるで本当の兄弟のように育ってきた。
今、この状況において、余計な感傷は不要。
そう思いながらも、彼の思考は過去へと引き戻されていく。
「アルコル、早く!」
駆け出していくミザル。
「待ってよ、ミザル」
その背中を必死に追うアルコル。
お目当ての人物を見つけたふたりは叫ぶ。
「メラク兄さん!!」
第一王子のメラクは、駆け寄ってきたふたりをまとめて抱きしめる。
「アルコル。ミザル。元気だったか?」
学問にも武芸にも秀でているのに、謙虚で心優しい兄が、ふたりとも大好きだった。
「うん。勉強も、剣と弓の訓練も、ふたりでがんばってるよ」
「そうか。えらいな、ふたりとも」
メラクにわしゃわしゃっ、と頭を撫でられ、アルコルもミザルも嬉しそうに笑う。
「ねえ、メラク兄さんは、いつか王様になるんでしょ?」
ミザルの言葉にアルコルが続く。
「だからぼくらは、大きくなったら近衛兵になって、兄さんを護るんだ」
「それは心強いな」
いつか近衛兵になって、兄を護り助ける人になろう。
ミザルと誓いあった、幼い日の夢。
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