ふたりの決闘

3/6
前へ
/6ページ
次へ
試験後半になってくると、次第に脚が重くなってきた。 息が苦しい。けれど今は考えるな。 目の前のターゲットひとつひとつを、確実に斬ることだけに集中しろ。 そう自分に言い聞かせ、アルコルは駆けていく。 ゴール寸前、アルコルは先頭を走るミザルの背中を捉えた。 ……おかしい。 ミザルなら、もっと早くゴールしていてもいいはずなのに。 かすかな違和感を覚えながらも、必死に脚を動かしアルコルはミザルに並んだ。 ゴールを目指し、ふたりは全力疾走する。 ほんのわずか、先にゴールテープを切ったのは、アルコルだった。 発表された最終順位は、アルコルが1位、ミザルが2位。 「トップ通過、おめでとう。アルコル」 「ありがとう」 アルコルは無理やり笑顔を作り、差し出されたミザルの手を握る。 もしかしたら、ミザル本人も気づかぬうちに、手加減していたのだろうか。 第二王子の自分に遠慮して。 幼い頃からの夢をふたり揃って叶えたこの日、芽生えたわずかな疑念は、近衛兵になってもずっと、アルコルの心から消えてくれなかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加