ふたりの決闘

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「アルコル様、お時間です」 目を開けたアルコルは、立ち上がり、今は鞘に納められている剣を手に取った。 決闘の場へと続く通路に、カツカツと靴音が響く。 緊張感が漂う闘技場に、アルコルは足を踏み入れた。 反対側から、ミザルがこちらに向かって歩いてくる。 闘技場の中央で、白い礼服に身を包んだふたりは相対した。 「これより、神前決闘を執り行う」 静まりかえった闘技場に、父王の宣誓が響き渡る。 「第二王子、アルコル」 神前決闘のルールは実に単純。 「第三王子、ミザル」 どちらかが命を落とすまで、戦い続けるだけ。 「生き残った勝者を、我が国の次の王とする」 ふたりは剣をすらりと抜き放ち、かちりと刀身を交える。 「両者、準備はいいか?」 アルコルは微笑み、ミザルも小さく笑う。 ふたりは声を揃えて叫んだ。 「神に恥じぬ、戦いを!」 神の前では、手加減など許されない。 ただ全力で戦うのみ。 「……始め!」 はりつめた静けさの中、ふたりの剣がぶつかり合う音だけが響く。 皆、固唾を飲んで戦いの行方を見守っているからだ。 身体の奥底から、わきあがる高揚感。 ミザルと死力を尽くして戦える歓び。 自分がずっと望んでいたのはこの瞬間だったのだ、とアルコルはようやく気づく。 ……ミザル以外には誰もいらない。 これは、俺たちふたりの決闘だ。
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