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魔法戦争が有るなんて普通は思わない。けれど、現実にそんな事が有る。別の世界の話なんかでは無い。
僕たちにだって対岸の火事くらいにしか思ってなかった。魔法を使う人間でもそう考えている人なんて少なくないだろう。
この世界には数々の魔法を使う人たちの団体が有って、その中でも多く所属している魔法協会と魔法連合が戦いになった。元々仲は悪かったが、ついにその時になった。
「こんなのそんなに続かないで直ぐ終わるんだろ」
軽く考える僕の思いの原因は簡単。僕たちの所属している連合がテロリズムを起こしたからと言う大義名分だから。そんな筈はない。
かなりの規模の団体同士なので、戦争になったらどんな事になるのかなんて誰にだって予想はついていた。それなのに火に油を注ぐ人なんて居ない。協会の嘘なんだ。誰もがそう思っていた。
「この戦争が始まってから一月が過ぎようとしているが、終わりは見えません」
魔法専門のテレビニュースを見ると、そんな風に言われてる。けれど、それでも僕たちは平和の中に居た。
理由は戦争と言えど、それは国同士とかではない。戦う場所だって荒野だったり、遠くの周りに被害を与えないところで戦っている。だから僕たちは普通に日常を過ごしていた。
「おはよう。今日も暗そうな顔してんな」
魔法を学びながらも普通に学校に通っている。学校で声をかけたのは僕の友人。もちろん魔法の世界の事なんて知らない人間だった。
「能天気で良いよな」
平和の筈だった。僕たちはそんな場所に居ると思っていた。
「なんだよ。彼女が引っ越したからってそんなんじゃ遠距離は続かないぞ」
そう。僕には彼女が居た。だけど今は居ない。
「そんなに簡単な事じゃないんだよ」
僕はため息を付きながら言うが、それは友人に聞こえないようにしている。それが魔法と普通の世界の取り決めによることから。
「招集通知が有った」
彼女が数週間前に話した事だった。
「なんで? 俺たち学生なのに。それに君が戦うの?」
「違うよ。医療系魔法を学んでるから、怪我した人を救けるんだって」
彼女は魔法連合からの通知文を僕に見せながら話している。確かに小難しくそんな事が紙片に綴られていた。
「これって危なくないのかよ」
「解んないよ。だけど、人は救けたい」
僕の心配を他所に彼女は、前向きな考え方をしていた。例え僕たちが文句を言えど、招集されたのだから断れない。
「魔法の実力が有るってもの考えもんだな」
「君は研究系だから呼ばれる事はないね。きっとそんなに危なくないよ。戦うわけじゃないんだし。そんなに心配しない!」
僕の顔が歪んでいたのを見て、彼女が励ましていた。
彼女はかなりの魔法の腕前。僕もそんなに落第者でもないが、彼女は年齢を関係なく考えても普通に実力は有った。それでもまだ高校生なんだから、協会も危ないところに赴任させないだろう。
「解ったけど、危ない時は逃げなよ。君は戦う必要なんて一つも無いんだからね」
当然解っている事なので彼女も頷いている。それでも一応の確認だった。
戦場までは移動魔法を使う。僕たち連合はその魔法の方法を呪文によって効力を得ている。因みに協会は魔法陣を使う。
移動魔法は力が必要なので魔具として宝石を使って、移動するべきところに合わせて呪文を言う。言葉は光の粒となって彼女を包んだ。その時には僕に対しての笑顔まで見て取れていた。しかし、これが僕の見た彼女の最期の姿になってしまった。
「戦場の救護所が襲撃を受けて行方不明者多数となりました」
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