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スーパーのセルフレジで、孝三(87歳)は苦戦していた。
「……ええっと、1789円をここに入れて?……1円玉は9枚あるかな……?」
財布の中の小銭を取り出そうとするが、指先が乾燥していてなかなか取り出せない。
やっとの思いで小銭を投入したが、次にどのボタンを押せばいいのか分からない。
「チッ!早くしろよジジィ!」
いつの間にか私の後ろに並んでいた夫婦らしい2人の男女に暴言を吐かれた。
「ああ、すみません。何せ年寄りなもんでやり方が分からんのですわ……」
「は?爺さん、ここのスーパーに来るの初めてなの!?」
女性が言葉尻強く問い掛けてきた。
「いやあ、この店はよく利用させてもらってますよ。でもこの無人レジの操作方法が覚えられなくてね」
夫婦が私を笑い者にしていると、
「お客様、お困りでしょうか?」
という声が聞こえた。
このスーパーに勤めている真理ちゃんだ。
サービスカウンターで働いている真理ちゃんだが、時折私が困っている時に駆け付けてくれる。
「清算でお困りですか?こちらのボタンを押してください」
無人レジから出てきたレシートを取る。
「うわぁ、やだやだ!歳って取りたくないねぇ~!!」
先程の夫婦が私に向けたと思われる言葉に聞こえない振りをし、急いで買い物かごをサッカー台に運ぼうとするが、歳のせいか思うように持ち上げられない。
「お運びいたしますね」
真理ちゃんがひょいとかごを持ち上げ、台に運んでくれた。
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