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「お待ちしておりました。孝三様」
その声に反応して目を開けると、私はいつの間にか西洋調の椅子に腰掛けていた。
目の前には長身の若い男性が笑顔を浮かべて立っている。
周りを見渡すと、煌びやかな宝飾品達がその輝きをまざまざと解き放っている。
見覚えのある扉が見え、ここが先ほど外側から取っ手を握った店だと気付く。
「いやはや……、記憶が飛ぶなんて私も随分と耄碌したものだ。しかし何故私の名前を?」
「よく存じておりますよ。先ほどもセルフレジの前でお困りでしたでしょう?」
なるほど、この男性も同じ時間帯にスーパーマーケットにいたのか。
「いやあ、見られていましたか。お恥ずかしい」
頭の後ろに手を回して軽く掻く。
「お疲れのようですね。少し休んでいかれては?」
店の男性の手には、いつの間にか急須があった。
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