復讐代行宝飾店~デジタルに強くなる眼鏡チェーン~

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(カップ)に注がれる紅茶の香りが鼻腔をふんわりと刺激する。 「もてなしてもらっても私にはこの店の商品が買えるくらいの年金はもらっていませんよ」 「ご心配なく。お代は一切頂きません」 受け皿(ソーサー)に乗せられた(カップ)を受け取り、口に運ぶ。 「ああ、うまい。いつも日本茶だから紅茶を飲む機会なんて滅多になくてね」 「それは光栄です」 店の男性はにこりと微笑み、「本日は孝三様にぴったりの商品をご用意いたしました」と言うと、やはりいつの間にかその手の平の上に小さな箱を乗せていた。 「こちらの商品は、眼鏡に着けるジュエリー、『眼鏡チェーン』でございます。これを着けるとデジタルに強くなり、セルフレジや駅の改札でもスムーズに操作が出来るようになりますよ」 目を丸くしていると、店の男性が、 「先ほども申し上げた通り、お代は一切頂きません。私は孝三様のお役に立ちたいだけなのです。どうか受け取っていただけませんか?」 と続けた。
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