煙草、黒猫、朝のベランダ

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「にゃあ」 黒猫のルキが鳴いた。 「先輩、煙草もらっていいですか」 「うん、いいよ」 サチエ先輩が、煙草を差し出す。火をつけてもらって、思いきり吸い込んでみる。 すぐに肺が苦しくなって、むせってしまう。 「もしかして初めて吸うの?」 先輩がクスクス笑う。 「無理すんなよ。朝食食べてく?」 「いただきます」 「パンでいいよね」 「はい」 煙草をもみ消して、あたしは思い出したように付け加える。 「サチエ先輩。ルキ先輩はやめておいたほうがいいですよ」 「なんでよう」 「あいつはクズです」 「ええ?」 先輩が笑った。 そういえば、この人はいつも笑っているな、と思う。 あたしは、その笑い方を真似して笑ってみた。 先輩の笑顔が、可愛かったから。 ~おしまい~
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