暗殺者は一人涙する。

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暗殺者は一人涙する。

「サス、悪いが……お前はクビだ」  突然だった。  集合場所の酒場兼冒険者掲示板の前へ着いて、仲間に突然こう言われたんだ。  何かの冗談──あるいは自分の夢なんじゃないかって思いたくて、でも目の前の仲間が吐き捨てるように言った言葉が、それを許してはくれなかった。 「正直、実力もないお前を支え続けるのにも疲れてきた。もっと苛烈なものになるだろうこれからの冒険にお前を連れていくことは、俺たちの命を削ることにも等しい。  それに回復薬だってタダじゃないんだ。  アサシンにしては体力消費が激しすぎるお前は……もう、邪魔なんだよ」  三人の仲間たちが俺を苦々しげな目で見つめる。 「なんで」  辛うじて出た言葉の続きも浮かばず、口を開閉させるしか出来なくなった。  だって。だって『普通』だったんだ。  俺を邪険にするわけでもなく、仲良く、接してくれていた筈だったんだ。  昨日も「的確に急所をついてくれて助かった」って、「お前のお陰で助かった」って、笑って言ってくれたんだ。  なのになんで、なんで。 「俺たちは、冒険者であり同時に勇者なんだ。魔王を倒す義務がある。  ……そこに、足手まといを連れていくわけにはいかない」  その言葉で、漸く『俺が彼らに無理をさせていた』という事実を理解することができた。 「そ、っか。ごめん。  ……じゃあ、頑張って」  それしか、言えなかった。  それ以上話したら、きっと俺は泣いてしまうから。  朝から冒険者たちの声で賑やかな酒場の声が酷く遠く感じられて、俺が今本当にここにいるのかも、もう分からなくなりそうだった。  ■  気が付くと俺は宿にいた。  動きたくない。動ける気もしない。  体に力が入らないまま、俺はふかふかのベッドに沈んでいた。 「──これからどうしようかな」  これからは、勇者パーティの一人としてではなくただの冒険者として生きなければならない。 「……頭、まとまらないや」  俺は思考から逃げるように目を瞑って、そのまま微睡みに身を任せた。
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