第一話

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実の所、僕は臼井先輩しか描けない。 他に描きたいものなんて無い。 中学の時から ずっとー 「へぇー、坂上くんって人体を描くの上手いね」 部長が背後から覗き込んでいた。 「あ…ありがとう…ございます」 「臼井の動きをよく止めて描けてる…と私は思う。結構、動いているものを描くのって難しいもの」 初めて褒められた。 けど…どこか複雑な気がした。 僕は、絵を描くのが好きな訳じゃ無い。 臼井先輩を描くのが好きなだけだからー それから…部長は臼井先輩と同じ二年生。 3年生が引退したから新しい部長なんだけど…。 『臼井』って呼び捨てるなんて、親しいのかな? 僕は臼井先輩のプライベートは全く知らないし、話した事も無い。 普段の臼井先輩って どんな感じなんだろう? どこか近寄りがたい感じがするから 想像が付かない。 スポーツ独特な体育会系な雰囲気も全く無いからー 知りたいって思ってしまう。部長が知っている臼井先輩の事を僕も知りたいってー いや、多分…部長以上に 僕は知りたい。
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