卒業文集

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卒業文集

皆様は卒業文集って見返したりされますか?わたしはたまに見返しては過ぎ去った学校生活に思いを馳せていました。それである時いつものようにぼんやりとあの個人写真がずらっと並んだページを見てあーあの子元気かなー、とかあいつ本当にバカだったけど良い奴だったなー、とかぼんやり考えてたんですよ。そこで気づいたんです。最初の方に不自然な空欄がある。それでよくよく元クラスメイトの顔と名前を思い出しながら見ていくと出席番号一番の飯田の写真が消えてる。元からなら前に文集を見たタイミングで気がつくはずなので確実に前に見返した後に消えてるんです。なんかよくある怖い話のテレビ番組みたいな話で怖くなってまだ連絡を交わす友人数人にそれとなく飯田の話をしたんです。でも返ってくる答えは皆同じでえ?そんな奴いたっけ?って言われて話はおしまい。あの時は本当に血の気が引いていくのが自分でもよくわかりました。飯田はクラスのお調子者、という感じの奴でいつもかなり目立っててそんな誰に聞いても覚えていない、みたいな人間ではなかったはずですから。ほら、よくありきたりな怖い話であるじゃないですか。学生の頃仲良くしてた友人がいて、同窓会とかでその子の話をすると、自分以外誰も覚えていない。そんな子はもともと存在していなかったのだ。それで調べていくと私達の生活していた学校では昔事故だったり事件だったりがあってその被害者と自分の記憶のなかにしか存在しないクラスメイトの顔がよく似ていた。みたいな。そんな感じの話を連想しちゃって。それで気のせいだと思いたくて震える手でもう一度文集を開いたんです。そしたら出席番号二番の石川の写真が何て言うんですかね、消えかけてる、といえばいいのでしょうか。うっすら写真の後ろの単色の背景が透けて見えてるんですよ。そこで分かったんです。あ、「存在していなかった」んじゃなくて「消されてる」んだって。 わたしだけが飯田の事を覚えていた理由は分かりません。わたしみたいにそんなしょっちゅう卒業文集を見る人はそう多くありませんから、心当たりといえばそれくらいです。ただ、ひとつ言えることがあるんです。わたしの名字は伊藤で出席番号三番です。次は、わたしなのかな、って。
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