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受験
これは私が中学三年生の頃のお話です。ちょうどその日は入試本番。いままでの努力を全力でだしきる時です。試験会場について、周りに知らない人しかいない学校で受ける模試とは違う感覚により緊張が高まります。しかしそんなことも言ってられないと参考書を開いて試験が始まるのをまっていました。十数分後だったでしょうか。隣の席に女の子が座りました。周りの人はもちろん近くの中学校の、前にどこかで見たことがある制服を着ていますがその子の制服にはどうも見覚えがありません。どこの子だろう、と思い失礼かなとは思いつつもその子をじっと見つめていて気がついたのです。その子の膝の下の辺りは透けており、後ろの椅子が見えています。足先に関しては完全に消えていたのです。そんなベタな幽霊がいるものかと目をこすり、もう一度彼女を見ますがやはり見間違いではありません。人生ではじめて幽霊といわれるものを見たのと幽霊が受験?という疑問とで試験が始まるまで私は勉強どころではなくなってしまいました。
いよいよ試験開始。答案用紙や問題用紙は幽霊である彼女にも配られます。試験監督の方は彼女が幽霊であることに気がついていないようです。こんな状況でも人生がかかっているとなると案外人は集中できるもので最初の教科は特に問題なく終わりました。
一教科目が終わった後の休み時間、私は恐怖より好奇心が打ち勝ち、ボロボロの数年前に出版された参考書をもつ彼女に声をかけ、自分でもかなり大胆ではあると思うのですが彼女のいかにも幽霊、という見た目を指摘しました。彼女は怒るわけでもなく、あっさりと自分がこの世のものでないことを認めました。そうすると次に気になってしまうのはどうして幽霊が受験をしているかです。どこぞの歌の試験もなんにもないとは嘘だったのでしょうか。
「A高校に受からないとお母さんが怒るから、」
そこまで言うと彼女は涙をこぼしました。A高校というのは地元で一番有名な進学校です。
「貴方ならきっと大丈夫、だって参考書がさんなになるまで勉強頑張ってきたんでしょ?」
そう言って私は彼女の参考書を指差し微笑みました。ありがとう、と笑う彼女の姿は人間と変わりありませんでした。
その後ですか?大急ぎで除霊の方法を調べてその場で出来そうなものを試したりその際に見つけた有名なお寺の方が作成したとかいう魔除け効果のある画像だったりで彼女には消えてもらいました。だってあんなこと言ったとはいえ受験においてライバルは一人でも減った方がいいにきまってるじゃないですか。
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