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『水晶魔術師』としてリビラが活躍するようになってからは、姉の存在はますます特別なものになっていった。
リビラが家に帰るたび、シリカは姉の元に飛んでいっては、今日はどんな風に魔力を使ったのか、何の魔物を召喚したのかという話を聞きたがった。リビラは疲れていると言いながらも、いつも子細に一日の出来事を話してくれた。
シリカは目を輝かせて姉の話に聞き入ったものだ。リビラがどれほど水晶魔術師として活躍し、ミストヴィルにとって欠かせない存在になっているかを考えるたび、シリカは誇らしさに胸がはち切れそうになるのだった。
だが、シリカ自身が『水晶魔術師』として拝命を受けた頃から雲行きが怪しくなった。
当時のシリカは十五歳。自分にも魔力があることは知っていたが、リビラがいる以上、自分が水晶魔術師になることはないと思っていた。
魔力があるといっても、シリカの力は姉よりもずっと弱いものだった。姉の真似をして水を凍結させて運ぼうとしても、一分も立たないうちにただの水に戻ってしまい、住民の服や家をびしょ濡れにして怒られたことが数知れずあった。
そんな次第だったから、シリカはできるだけ魔力を使わないようにしていた。だからリビラから、自分を『水晶魔術師』に推薦したいと言われた時、シリカはひどくまごついたものだ。何度も説得されてやむなく承諾したものの、正直シリカには自信がなかった。自分が姉と同じように、颯爽と魔物を召喚して賊を撃退する姿など、全く想像がつかなかった。
実際、シリカは氷結召喚ができなかった。リビラに相手になってもらって何度も練習はしたが、生まれるのはアメーバのようないかにも頼りない物体ばかりで、賊と戦う強い魔物など、とても召喚できそうになかった。
リビラはそのたびにシリカを叱った。氷結召喚ができないのは、水晶魔術師としての自覚が足りないからだと。シリカは姉に注意されるたびに唇を噛み、じっと押し黙ってその叱責に耐えた。
でも内心では悶々としていた。お姉ちゃんは元々優秀だから簡単に術が使えるんだ。私みたいな落ちこぼれの気持ちなんて、お姉ちゃんにわかるはずない――。
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