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水晶魔術師になって間もなく、シリカは自分が姉に対して強い劣等感を抱いていることに気づいた。
リビラが活躍したという話を聞くと、以前は自分のことのように嬉しく思えたのが、今はかえって自分の無能さが露呈したように思えて居たたまれなくなった。人々がリビラを褒め称える声を聞くたび、シリカは自分の存在意義がわからなくなった。
ミストヴィルの人達は、この街にもう一人水晶魔術師がいることなど忘れてしまっているだろう。実際、リビラがいればこの街の平和は守られている。だったら自分など必要ないではないか――。シリカは何度そう考えたか知れなかった。
自分がこんな風に悩んでいることに、リビラはきっと気づいていないだろう。リビラは訓練さえ積めば、妹も優秀な魔術師になると信じているようだった。
だがシリカは、自分は決してリビラのような魔術師にはなれないだろうと考えていた。
自分は姉と違って能力が低く、おまけに臆病で引っ込み思案だ。だから努力したところで氷結召喚一つできず、誰かから頼られる存在にはなりえない。でも、リビラはシリカの心境など知る由もなく、何度も耳に痛い言葉をかけてくる。
リビラが自分のためを思って言ってくれていることはわかっている。それでもシリカは辛かった。
姉に何かを言われるたび、その期待に応えられない現実の自分とのギャップが浮き彫りになり、罪悪感に心が押し潰されそうになるのだった。
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