不吉な来訪者

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 自分に魔力がないという現実を悟ったのは、レイクが十歳になった頃だった。  人が魔力を持つか否かは遺伝によって決まる。両親共に魔法を使えれば、その子どもも魔力を持って生まれる可能性は高い。そして元々の魔力が微弱であっても、鍛練を積めば力を増強することはできる。  だが、生まれつき魔力を持たない者は、どれだけ鍛錬を重ねたとしても力が発現することはない。すでに魔力に関する本を何冊も読みこんでいたレイクはその事実を知っていた。だがまさか、それが自分の身に当てはまることだとは思いもしなかった。  レイクはその説を否定する証拠を必死になって探そうとした。魔術師の血を引いていなくても、突然変異で魔力が発現した例があるのではないかと。  だが、レイクがどれだけ手を尽くして調べても、魔力が先天的に決まるという事実を覆すことはできなかった。  受け入れがたいその事実を前に、当時のレイクがどれほど苦しんだか――。  両親の期待に応えられなかったことへの罪悪感はもちろんあった。だがそれよりも辛かったのは、自分が魔術師として選ばれなかったという事実だ。幼い頃から自分は特別な存在だと信じていたのに、所詮は掃いて捨てるほどいる人間でしかないことを悟った。あの時の絶望感と敗北感は、今も忘れることができない。
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