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レイクが医師になることを決めたのは、そんな屈折した感情が根底にあったからかもしれない。水晶魔術師になるという夢に敗れたレイクにとっては、違う形で自尊心を満たすことのできる目標が必要だった。それが医師だった。医師になって一人でも多くの患者を救い、名医としての地位を獲得する。それはレイクの傷つけられた誇りと虚栄心を回復させる唯一の方法に思えた。
それ以来、レイクは医者になるために血の滲むような努力をした。朝から晩まで医学書を読み耽り、王都で高名な医師の下に弟子入りし、身を粉にして働いた。幸い、彼には生まれ持った知性と、目的のためなら苦労をも厭わない気骨稜々としたところがあった。レイクは着実に医師としての知識と経験を重ね、ついに二十歳という若さで開業医の地位を獲得した。
七年ぶりに故郷に帰ってきたレイクを、ミストヴィルの人々は暖かく迎えてくれた。夢に破れたレイクの過去を忘れ、医師としての彼の優秀さを褒め称えた。今や彼はミストヴィルでなくてはならない存在になり、それによってレイクの虚栄心は慰められたかのように思えた。
リビラと交際を始めたのも、最初は純粋な感情からだった。人々の力になりたいという彼女のひたむきさに心を打たれ、医師として彼女を支えたいと強く願った。
だが、水晶魔力師としてリビラが活躍を見せるたび、自分の中で複雑な感情が疼いていたことも事実だ。
最初にその感情に気づいた時、レイクは当惑したものだ。自分は今や一人前の医師として確立している。それなのに、今さらリビラに修羅を燃やすことに何の意味がある? レイクはそう考えて何度も自制しようとした。だが、そうやって抑え込もうとすればするほど、レイクの嫉妬心はいっそう激しく波打つのだった。
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