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二人の魔術師
一角獣に捉えられていた若者は地面に下ろされ、そのまま王都へ連行されることになった。住民はなおも熱心にリビラの活躍を称えていたが、熱が冷めるにつれて次第に散り散りになり、後にはリビラと少女だけが残された。
「ご苦労だったわね、ユーニ。もう戻ってもいいわよ」
リビラが一角獣に向かって言った。その瞬間、一角獣の身体が水滴となってぱっと飛散したかと思うと、すぐに液体の塊となり、引き寄せられるように運河の中へ戻っていった。ぼちゃんという音が辺りに響き、波紋が運河に浮かんだが、すぐに消えて街は元の平穏を取り戻した。
「……やっぱり、お姉ちゃんはすごいね」
少女が呟いた。そこで初めて少女の存在に気づいたのか、リビラが振り返った。
「あら、シリカ。見てたの? あなたも手伝ってくれたらよかったのに」
「……私が手伝わなくたって、お姉ちゃん、一人で泥棒を捕まえてたじゃない」シリカと呼ばれた少女がいじけたように言った。
「そんなこと言って、本当は氷結召喚が上手くできなかったんでしょう? いい加減一人でできるようにならないと」リビラが呆れ顔で肩を竦めた。
「……私だって練習してるよ。でも……いざ術を使おうとするとどうしても緊張しちゃって……」
「シリカ、いつも言ってるでしょ? ミストヴィルにとって水晶は唯一の資源、あたし達の命の源なの。その大事な水晶を悪い奴らから守るのが、あたし達水晶魔術師の役目。それが緊張して術が使えないっていうんじゃ話にならないわよ」
「それは……わかってるけど」
シリカはロッドをぎゅっと握り締めた。そうだ、自分達に課せられた使命がどれほど重いかはわかっている。わかってはいるけれど――。
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