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シリカが泣き出しそうな顔になっていることに気づいたのか、リビラは表情を和らげると、優しくシリカの肩に手を置いた。
「ほら、そんな顔しないの。今晩、また特訓に付き合ってあげるから。頑張って特訓すれば緊張しないで術が使えるようになるから。ね、一緒に頑張ろう?」
「……うん」
「よし! じゃ、あたしは長老のとこ行ってさっきのこと報告してくるから。あ、それと街の人からも何件か頼み事されてるから、帰るの遅くなるかも」
「わかった。じゃあ、今日の晩ご飯は私が用意しとくね」
「助かる! あんたの手料理、いつも楽しみにしてるんだからね!」
リビラは快活に笑ってぽんとシリカの肩を叩いた。そのまま手を振って立ち去ろうとしたが、ふと何かを思い出したように振り返った。
「あぁそうだ。シリカ、レイクのとこで薬草もらっといてくれる? もうすぐ切れそうなんだ」
「また? この前もらってきたばかりじゃない。それにレイク先生のとこなら自分で行けばいいのに」シリカがむくれて言った。
「あたしが直接行ったらまた怒られるからさ。ね、お願い!」リビラが顔の前で手を合わせた。
「……もう、しょうがないな。その代わり、明日の晩ご飯はお姉ちゃんが作ってよね」
「ありがと、恩に切るわ!」
リビラは再びぱちんと手を合わせると、今度こそ足早に立ち去っていった。シリカは苦笑しながらその背中を見送った。
まったくパワフルな姉だ。ついさっき盗人を捕まえたと思ったら、休む間もなく街の人を助けて回っている。でもそれを苦にするどころか、楽しんでさえいるのが姉らしい。
だからリビラは誰からも慕われている。同じ水晶魔術師なのに何もできず、傍観していただけの自分とは大違いだ。
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