売り物の愛は逃げたがり

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「ほら、好きなもん食え。奢ってやる」  街なかのカフェのテラス席で、オウルは機嫌よくメニューを広げてみせる。 「じゃあアイスコーヒー」 「おう」  次を促すイントネーションに、リオは並ぶ文字に再び目をやった。 「じゃあ……サンドイッチとか?」 「俺に聞くな」 「じゃあ、サンドイッチ」 「じゃあじゃあってなんだてめえは」 「……いいだろべつに」  リオは唇を尖らせ、メニューを押し返した。 「アイスコーヒーとサンドイッチでいい」 「でいい、じゃねえ。俺が奢ってやるってんだ」 「その自己肯定感どこから来るんだよ」  思わず苦笑をこぼすリオに、オウルは肩をすぼめた。 「まあ、いい。俺が適当につけてやらぁ」 「いいって」  困惑するリオの気も知らず、オウルはベルを振ってさっさと店員を呼びつけてしまう。 「アイスコーヒー、サンドイッチ、それからチキンソテー……」  すらすらと読み上げる姿を、頬杖をついて眺める。外は快晴。テラス席では眩しすぎるくらいだ。陽の光に、オウルの白い髪が透き通る。  ああ、そうだ。リオはぼんやりと思案に暮れる。この男と会ったのも、こんなうざったい晴天の日だった。
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