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「ママはすごく大変だったのに、切断された指輪を見たショックで何も言えなかった。ママだって指輪の事を気にして謝ってくれていたのに、僕は指の状態を確認することすらしなかった。後でお義母さんにその時の写真を見せてもらって…逆に怖くなってその話に触れる事すら出来なくなっていた。本当にごめん」
驚いた。
もしかしてパパは17年間もずっとその事を気にしていたのだろうか。
「何?何の話?」と咲良が身を乗り出す。
私は消防署でお世話になった話を、スープを飲みながら説明する。
パパはその話を聞きながら、顔を覆い深いため息をついた。
「へぇ…。ママの指輪はえらく波乱万丈だねぇ。沢山の人に助けてもらったりしてさ」
「確かにな。ママの指に戻ってこれたことに感謝しないとな」
「そうね。また太って指に入らない、抜けない、なんてことになったら今までお世話になった皆に怒られそうね」
それからメインディッシュを済ませ、デザートが運ばれてきたタイミングで私はプレゼントを手荷物から取り出した。
「20年間ありがとう」
パパにはお揃いの湯呑、咲良には大好きな和菓子。
今日購入した和菓子は実家に置いてきた。
「あれ、私にもあるの?」と咲良は嬉しそうに包み紙を開ける。
「そうよ、私達夫婦生活20年間に彩を添えてくれた大切な存在だからね。生まれてきてくれてありがとう」
咲良はハニかみ「家に帰ったら、皆で食べよう」と提案してくれた。
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