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こうして時々出してきては、ブカブカであることを認識し、笑う。
サイズのお直しも検討したが、直すということは、またこの指輪に傷をつけるという事…。
何より直した後また太らないとは限らず、抜けなくなって周りに迷惑をかけてしまう事を恐れたため、このままにすることにした。
「こうして無事結婚60年目を迎えられて、私は幸せですよ」
シワシワの左手を、主人の左手に重ねる。
私達の指輪の表面は細かい傷だらけになり、昔のように光り輝いてはいない。
私達の60年間の結婚生活だっていい事ばかりでなく、苦労も多かった。
だが、主人がそばにいてくれたから、乗り越えられた。
娘が私達の鎹になってくれたから、夫婦円満でいられた。
「また来年、こうしてお祝いしましょうね」
私は主人と私の指から結婚指輪をはずし、またジュエリーボックスに収納した。
(了)
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