決意

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 消防署に到着すると、物珍しさからか詰め所にいた隊員が皆集まってきた。 「切るなんて勿体無い!」そう言って糸を準備した中年の隊員は、私の指の色を見て慌てて指輪カッターを取りに行った。  まず手前にある指輪の下に指輪カッターの土台を食い込ませ、カッターを回転させ少しずつ削っていく。  どのくらい時間が経ったのかはわからないが、私にはこの時間が非常に長く感じた。  ガチン。  1本目が切れた。  おぉぉ…と周りの隊員から感嘆の声が漏れる。  私の指の痛みも少し楽になった気がした。  指輪カッターを手にした隊員は2本目に手をかける。  隊員も私も父も母も、固唾を飲んでそれを見守る。  ガチン!  2本目が切れた瞬間、おぉぉぉ!と歓声が上がった。  ふっと私の薬指も気持ちも楽になった。 「指を傷つけるかもしれないから、ごめんね」  そう言って隊員はペンチでCの形に指輪を広げ、そっと指から2本を引き抜く。 「ありがとうございます、ありがとうございまず!」  感動のあまり私は涙した。  そして事務手続きをし、再度礼を言って家に帰った。  夜、仕事から帰ってきたパパに報告する。  パパは変形した2本の指輪を目の前にして「…そうか」とだけ言った。  ただ一瞬、もの凄く嫌そうな、悲しそうな表情をした。  そのパパの表情を見た時に結婚指輪の重さを知り、絶対大切にしよう、指輪が入る体型を維持して一生この薬指にはめておこうと思った。
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