捜索

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 和菓子屋さんの開店時刻まで、あと10分ほどあった。  駐車場を捜索させてもらうくらい大丈夫よね、と思いながらハンドルを操作する。  心臓がドキドキしてきた。  あるかもしれない。私の指輪は、その駐車場に落ちているかもしれない。  ひょっとしたら誰かが拾って直接交番へ届けてくれているかもしれない。  和菓子屋さんで見つからなかったら、最寄りの交番へ行こう。  県道に面しているその和菓子屋さんの駐車場に近づくと、茶色い人影がいくつか身をかがめて動いていた。  あれ?店員さん?開店前の駐車場のお掃除かな?  寒い中、お疲れ様です。  ……違う!きっと私の指輪を捜索してくれているのだ!  私は店員さんを車で轢いてしまわないように、ゆっくり駐車場に侵入し「先程指輪の件で電話をした者です!」と店員さん達にご挨拶をした。  昨日駐車した場所から転がり落ちる場所を推測し、範囲をすぼめて私と店員さんで捜索した。 「ありました!排水溝に落ちていました!」  ひとりの店員さんが手を泥だらけにして指輪を高々と掲げる。  皆、歓喜に沸いた。 「ありがとうございます!ありがとうございます!」  その場にいた店員さんと、お店で開店準備をしている店長さん、店員さんにお礼を言い、和菓子を数個購入してお店を出た。  17年前にお世話になった消防署の方にはお礼を拒否されたが、今度こそ後日お礼に伺おう、と帰り道に考えていた。  しかしどうしよう、和菓子屋さんに菓子折りは持って行けないかな…。  家に帰り、先程電話したスーパーに指輪が見つかったことを報告した。
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