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謝罪
「ごめんなさい」
レストランのパパと咲良の3人で着席したテーブルにて、注文を終えたタイミングで謝罪する。
「昨日から結婚指輪を失くしていました」
私は今日の出来事を説明した。
咲良はケラケラ笑っていたけど、パパは黙って難しい顔をしていた。
怒っているだろうな。
呆れているだろうな。
大切な指輪を切っただけでなく、今度は紛失するなんて。
しかも結婚記念日に。
説明が終わったタイミングでスープが運ばれてきた。
パパは黙ったままスープをひとすくいし、飲みかけてやめた。
「パパ、どうしたの?」
咲良がその行動に驚いて首をかしげる。
私は、お叱りの言葉を受けるために身構えた。
「良かったな、あって。その和菓子屋さんに、明日お礼に伺おう」
そう言ってスープを飲み始めた。
「……怒られるかと思った」
私の言葉にパパは静かに首を振った。
「そりゃ結婚指輪は大切なものだが、僕はママが一生懸命探してくれたことが嬉しいよ」と静かに呟いた。
そして「それより、咲良が産まれる前の…」とパパの言葉に私はビクッと身体をこわばらせた。
「あの時の僕の態度は酷かった。ごめん」
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