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ポールポジションから1コーナーにトップで飛び込み、続く2コーナーも難なく抜ける。
スピードはそこまで殺さずに、S字コーナーへ。
続いて見えてくるのは逆バンク、左下がりの右コーナー。
目の錯覚で傾いてるように見えるだけなのに、走っていると外側に吸い寄せられる気がして少し苦手な場所。
ダンロップコーナーを抜け、デグナーからの立体交差下をくぐり、ここまででやっと半分、でもホッとできないのが鈴鹿だ。
110Rからのフルブレーキでヘアピンに飛び込み、バイクレース専用シケインに入る。
スプーンカーブはどこを走ってもいいぐらい広いけれど、タイヤが摩耗したらズルズルとアウトに振られてしまう。
一番好きなのはこの後、スロットル全開で駆け抜けられるバックストレート。
景色がただの色のように流れていき、メットの中で血が逆流するような興奮を覚える。
気持ちが良すぎて、いつも130Rでのブレーキングが遅れそうになる。
わかっているというのに何をしてるんだか。
気付けばいつの間にか降り出した雨が、ヘルメットのシールドを濡らしていた。
滑らないように細心の注意を払って、フルブレーキでシケインに飛び込み、最終コーナーに差し掛かり、そこでようやくアウト側に誰かがいる気配に気づいた。
ゼッケン18、俺の兄貴だ。
何で兄貴が、ここに!?
気を取られ、ズルリと滑ったタイヤはアウトに流れていく。
コントロールを失ったマシンはスロモーションのように、兄貴のマシンを横倒しに巻き込んで……。
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