クラップ×クラップ

2/7
前へ
/7ページ
次へ
「さびしくないの?」 「なに、一人きりじゃないさ。ひっそりとヨセイを送るよ」  ヨセイってなんだろう。今でも畑に囲まれた小さな家でひっそりと暮らしているのに、シセツというところはもっと静かなのだろうか。僕のおばあちゃんも去年そこへ行ってしまった。なかなか会えないところだってことは分かっている。 「たくさんなったよ。文鳥、机、木、ねこ、紙ひこうき……オジサンのおすすめは?」  おすすめか、とオジサンはくすり、笑った。 「どういう大人になりたい?」  その考えはなかった。僕は考えた。冬が終わって、卒業式をしたら僕は中学生になる。 「頭が良くて、お金持ちとか、イケメンとか?」  オジサンは声を出して笑った。 「オジサンだったら、人に恵まれる、かな」 「それっていいこと?」  オジサンは強くうなずいた。だから僕はそれにした。クラップクラップ、拍手が二回、響きわたる。 帰るとき、オジサンは「いつも君を遠くから見守っているよ」といって手を振った。僕は大きく腕を振った。 しばらくするとオジサンの家は取りこわされて、畑もなくなった。何にもなくなった土の上には、太陽光発電のパネルが並んでいる。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加