クラップ×クラップ

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 なんてことだ。一時の辛さで全てを失う孤独を選んでしまうなんて――ん?  ちがう、ちがうぞ。我が子が巨人になって突進してくるではないか。ぐしゃ、と踏まれて気付く。 そうか。僕は紙切れに「一人」と書いてある文字になっているのだ。そりゃ音も聞こえないわ。 オジサン、元に戻りたいよ。オジサン、おおうい。一向に戻る気配はない。 こら、踏むな、破れるだろう。いたた、往復するなよ。ボールは家の中で投げちゃダメだ。ってそれはオジサンとの思い出のボールじゃないか。よし、投げろ、こっちに投げろ。ああ、ちがうもっと左――あれ、赤ん坊は? 「あうう」  肉団子のような手が飛んでくる。いてて、よかった、無事だな。お、こっちを向いたぞ。 かわいいなあ。あ? あー! よだれが! よだれが大滝のように降ってくる! 僕は必死に身体をひねり音を出す。「元に戻りたい!」だよ、オジサン! 「ペリリ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加