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なんてことだ。一時の辛さで全てを失う孤独を選んでしまうなんて――ん?
ちがう、ちがうぞ。我が子が巨人になって突進してくるではないか。ぐしゃ、と踏まれて気付く。
そうか。僕は紙切れに「一人」と書いてある文字になっているのだ。そりゃ音も聞こえないわ。
オジサン、元に戻りたいよ。オジサン、おおうい。一向に戻る気配はない。
こら、踏むな、破れるだろう。いたた、往復するなよ。ボールは家の中で投げちゃダメだ。ってそれはオジサンとの思い出のボールじゃないか。よし、投げろ、こっちに投げろ。ああ、ちがうもっと左――あれ、赤ん坊は?
「あうう」
肉団子のような手が飛んでくる。いてて、よかった、無事だな。お、こっちを向いたぞ。
かわいいなあ。あ?
あー! よだれが! よだれが大滝のように降ってくる! 僕は必死に身体をひねり音を出す。「元に戻りたい!」だよ、オジサン!
「ペリリ」
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