前書き

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前書き

 突然だが『ラボ畜』という言葉を聞いたことがあるだろうか。    お察しの通り、社畜の類義語、ラボと家畜を足した言葉である。  つまり、ブラックな研究室に所属し、さながらラボにひそむ家畜のごとく、心を捨てて昼夜問わず実験をしている大学院生のことだ。  大学院生は、専門的な技術と知識を提供し、上司の指示のもと研究室で働いている。  ……はずなのに、我らが日本では悲しいことに無給の学生扱いである。体が壊れるのが先か心が壊れるのが先かという理不尽な世界に生きているというのに、こんな世知辛いことってあるだろうか。  割とあるのかもしれないが私はない。  やりがい搾取断固反対と叫びたいが叫ぶ元気もない。  偉い人が変えてくれるのをひっそりと待っている。    さて、社畜なみとは言わずともそれなりの人数がいるはずなのに、ラボ畜の実態はあまり知られていない気がする。  なろうを探せばトラックに轢かれて異世界転生する社畜がいるのだから、異世界転生するラボ畜がいたっていいじゃないかと思うが、ないのだ。とても残念である。物語の中でくらい理不尽を吹っ飛ばして活躍する同志を見たかった。  そんな感じの認知度なので、そもそも大学院生ってなんだよ、何してるんだよと思う方も多いんじゃないだろうか。  しがない一ラボ畜として私はこれを悲しく思う。 「私、ラボ畜でさあ!」と言ってもぽかんとされるだけだからだ。  これでは理不尽を笑い話にすることもろくにできない。あんまりである。    だからせめてもの反抗として(何に対する反抗かは置いておいて)、ここにラボ畜の記録を残すことにした。ひとえに誰かに知って欲しいからだ。  もしあなたがラボ畜の同志なら、あなたはひとりではないぞと肩を叩きたい。もしあなたがラボ畜とはなんぞやと思ってくれるなら、暇つぶしになれば嬉しい。  前置きが長くなってしまった。  全部話すと多分結構長い話になる。かといってそんなにくどくど書いてもあれなので、記憶にやたら残っている出来事を可能な限り時系列順に書き出していくことにする。    それではどうぞ!
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