パクるやつはどこにでもいる

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パクるやつはどこにでもいる

 週末にセミナーや勉強会が入ることもあるが、院生の本分は研究である。    はじめにほんの少しだけお話したように、私の研究室は有機化学系というものづくりの研究室だ。白衣を着てフラスコを振っているときが大半だけど、それを始める前にやらなければならないことがある。    こういうのが作りたいな、とターゲットをデザインして(もしくは自然に存在するものをターゲットに選んで)、作るためのロードマップを考えるのだ。  Dr. Stoneで千空がよくやっているやつをイメージしてもらえばいいだろう。私はあのマンガが大好きだ。    こんな作り方だと時間が短縮できる。  この材料なら安く手に入る。  この作り方だとトリッキーでかっこいい。  そんなことを考えながら合成ルートを決めていく。これがなかなかパズルのようで面白い。人のを見るのも面白い。よく見るお決まりの作り方もあれば、それをそこに使うのか! とびっくりするようなオリジナリティあふれる作り方もある。    これは、小説のプロットを作るときと少し似ているかもしれない。  どこが似ているって、作るときには他人との被りに注意しないといけないところだ。    いわゆる王道と呼ばれるくらい認知度がある作り方を自分のルートに組み込むのは問題ない。  一部の層には知られているものをそうと分かるように引用するのも、オマージュみたいなものだ。引用文献さえ明記しておけば問題ない。    問題になるのは、盗用/剽窃――いわゆるパクりだ。他人の成果やアイデアをそのまま、またはちょっとだけ変えて、あたかも自分のものかのように紹介するのは絶対にいけない。  盗用/剽窃は、他人の作品と、それにかけられた時間と労力、それらに対してのリスペクトを忘れてしまった卑劣で恥ずべき行いだ。  やった瞬間すべての信用を失う。学部生が期末レポートでこれをすればその年の単位はすべて消えるし、院生含めた研究者がこれをやれば研究者として死んだも同然である。  なんでいきなりこんな話をするかって?  私はこのブラックな研究室で、限りなく盗用/剽窃に近い状況を体験したからだ。  被害者側ではない。思い出すだけで腹を切りたくなるけれど、加害者側に組み込まれていた。
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