人生最後の日

5/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
その後、控え室代わりの部屋前に防犯カメラらしきものが付いているのを発見し、先生に確認させてくださいと依頼した。控え室近くの体育館裏扉から出て、職員室へ先生と移動しながら会話する。かなり古い防犯カメラのようで、確認できるか分からないとの事だったが、白黒で画像が荒れているものの、今日の映像と時刻がしっかりと記録されており、そこには違和感のある映像が残っていた。のっぺらぼう役の彼は、かなり大きく重そうなリュックを背負って控え室に入っていたのだ! 事件後、控え室にあったそのリュックを確認したところ、飲み物が入ったクーラーボックスと劇に使う小道具等、ソコソコの量の荷物が詰められており、演劇部が移動する時に使用しているリュックなので特に問題はないのだが、これから自殺しようとする人物が、わざわざ重い荷物を背負って控え室に入るのは不自然だ! 映像を最後まで見たが、他に問題点は無かった。美奈ちゃんが部長を発見するまで控え室の扉は閉まったままだし、他の人物も映ったりしていなかった。 俺は控え室の窓を開け、電子タバコを吸おうとポケットに手を突っ込んだ時、ここが学校内だと気付いて慌ててポケットから手を出し、ふ~っと溜め息をついて考える。 このおかしな行動と、劇の途中に自殺をしたという事から、俺は演劇部内でのイジメを疑った。のっぺらぼう役の部長は、演劇部員に強い怨恨を抱いていたので、部の道具を使い、何らかのアピールをしたのでは無いだろうか? その後、俺はリュックにイジメられていた履歴やヒントになるものがあるのではないかと探したが、それらしき物は出てこなかった。さらに、美奈ちゃんを含めた演劇部員と先生達に事情聴取を行ったのだが、部長がイジメられているといった事実は確認出来なかった。ただ、イジメというのはイジメている側も理解していない事が多く、周りからは、ただじゃれあっている様にも見えてしまうから厄介だ。後は、部長の自宅の部屋に何らかのメッセージが残っていないか、また、可能性はかなり低いが、彼が息を吹き返してくれるのを祈るしかない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!