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「なんだ隼人お客様とお知り合いか?」
バーテンダーが隼人に尋ねている。
「大学の時の友達。今もたまに会ってる。」
「そうだったのか。どうも弟が何時もお世話になっています。兄の優一です。バーテンダーやっています。見れば分かるか。」
優一は先程迄見せていた余所行きのクールな顔から一気に柔らかな笑顔になり鈴葉にそう言った。
「驚いたぁ。まさかここで会うなんて。それでこの方がお兄さんだったとは。」
「俺もびっくりした。で?鈴葉は一人で呑んでんの?」
鈴葉の周りを見渡しながら目をキョロキョロとさせている。
「うん。今夜はちょっと気分転換に。」
───本当はやけ酒に近いけどなんて言えない。
「あ、隼人。今お友達帰る所だから駅迄送って行ってくれないか?少し強めのお酒で酔ってしまって。」
「分かった。じゃあ頼まれてた荷物ここに置いておくから中身確認して。」
「うん。仕事帰りなのにありがとうな。」
隼人は優一から足らない食材があるので買って来て欲しいと先程連絡を受け仕事帰りに店に寄り届けた所だった。急な予約で買い出しに行けない時はたまにこうして仕事帰りの隼人に頼む事もしばしばある。隼人の自宅が近いのと兄弟の仲も良い為隼人は快く引き受け頼まれればシェイカーを振るなんて日もあったりするのだ。鈴葉は隼人に兄が居た事やたまにバーテンダーも熟している事実を知り四年間の友達関係だが意外な一面を垣間見れた気がしてちょっと嬉しくなっていた。
「鈴葉さん。また気が向いたら呑みに来て下さいね。」
「はい。是非また来ます。」
「兄貴またな。」
「またな。」
鈴葉と隼人は優一に挨拶を交わすと店を後にし夜の呑み屋街を駅に向かって歩き出す。
「そっかぁ。久保山君のお兄さんのお店だったとはねぇ。偶然だったな~。久保山君にもばったりだったし。」
赤い顔を隼人に傾けニコニコした表情の鈴葉。
「まぁ、この呑み屋街は有名だし誰か知り合いの一人や二人居てもおかしくはねぇよな。でもそれが鈴葉だったのは意外だったけど。鈴葉って見た目清楚でなんか一人でふらっと呑み屋街に行くイメージ湧かなくてさ。」
「そ、そんなイメージなの?私。」
「俺の中ではな…てかお前顔真っ赤だな。大丈夫か?」
「え?あ、うん。さっきお水もらったし。多分空腹で強めのウィスキー呑んだのがいけなかったな。」
「そりゃあガツンと来るな。でも強めのお酒なんてどうして?」
「…色々ありまして。あ~、なんかお腹空いちゃったな。久保山君ご飯食べた?」
「まだだけど。丁度良いや。食べ行くか!」
「行こう!そこら辺のお店入ろう。」
「だな。なんせこの通りは店で溢れてるからな。」
意気投合した二人は近くの海鮮居酒屋を見つけ店内へと入って行く。
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