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一歩足を踏み入れると活気に溢れた空間が広がっていてハツラツとした店員に席を案内され二人はカウンター席に腰を下ろした。タッチパネルで生ビールとジンライム、枝豆を頼みお絞りで手を拭きながら届くのを待つ。鈴葉はまだ火照った体でありながらノンアルコールには手を出さずにアルコールを欲した。
「鈴葉大丈夫か?水とかウーロン茶もあるけど。」
隼人が赤い顔の鈴葉を横で心配している。
「大丈夫。体は火照ってるけど気持ち悪く無いし。それにまだ呑みたい気分なの…。」
小さく影を落とす鈴葉を隼人は見逃さなかった。
「あぁ…そう言えばさっき色々あったみたいな事言ってたよな。仕事で?」
「仕事もそう。今日だって私がぼぉっとしてたせいでミスしちゃってお客様怒らせちゃってさ。」
「まぁ、俺もミスはする事あるけど誰でもやってるってそれは。で?後はプライベートだろ?」
「あ~。分かっちゃうよね。そんな雰囲気出してるって自分でも何となく自覚はしてるからな。幸薄まっていくオーラ?みたいな。」
「お待たせ致しました。ドリンクと枝豆で御座います。」
会話の途中で注文したドリンクと枝豆が届いたのでとりあえず話しを中断して二人は乾杯をした。
「ぷはぁ~っ。」
「えっ、久保山君呑み干したね。そんなに喉乾いてたの?」
「うん。じゃ、お先に追加のビール頼んじゃうな。後飯も適当に注文しとくよ。」
「ありがとう。」
隼人はほんのり茶色掛かった髪をかき上げるとタッチパネルに細長い指でトンと触れて生ビールやお刺身盛り合わせ、唐揚げ、明太子オムライス等数品を注文した。鈴葉はタッチパネルを操作する隼人の横顔を何気なく見ている。
───外見も雰囲気も大学の頃のちょっとチャラい久保山君のまんまだな。だけど性格は悪くないし顔はイケメンだから相変わらず女性に人気なんだろうな…あ、私そう言えばこんなに間近で久保山君の顔見たの初めてかも。思ってたよりも睫毛長いし鼻筋も綺麗…。
「ん?」
「はっ、、」
「あぁ、ごめん。頼みたい物あった?」
タッチパネルを鈴葉に差し出す隼人。
「ううん。久保山君の頼んだので大丈夫。それより前回の呑み会久保山君参加してなかったけど仕事忙しかったりする?」
「忙しいのもあったし俺もプライベートで色々ありまして…はは、鈴葉の真似。」
「やっぱりねぇ。モテる男に休みは無しって訳だ。私もどうしたらそんなにモテるのか教えて貰いたいよ。大学の時も相当モテてたもんね久保山君。」
「そんな、俺の話しはもう止めようぜ。そうだ、鈴葉の顔見て思い出した。昇は?元気してる?」
「元気元気。昨日もお母さんが温泉行ったから頼まれて温泉饅頭届けに行ったら昇が出て来て少し立ち話してきたよ。仕事順調みたい。」
「システムエンジニアだよな?」
「そう。パソコンと睨めっこみたいだけどね。久保山君は確か営業だったよね?」
「良く覚えてるな。」
「ふふ。前に仕事の話になった時に営業って言っててフランクな久保山君にぴったりだなと思ってたんだ。人に気に入られるタイプだし。」
「おっ。褒めてくれてる。俺も褒め返さないと…えっと…うんと…。」
「あはは。褒める所無い人から無理矢理褒めなくて良いから。」
「そんな事無いぜ。鈴葉はそうだな…えっと…。」
「ほらっ、また止まった!」
「あはは。冗談冗談。からかっただけ。」
「もぉ。」
隼人にお酒も入って他愛のない会話をしていく二人の間には大学の友達からまた更に親睦が深まっていくそんな気がしていた夜だった。
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