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注文を通すとお絞りで手を拭きながら隼人が絢香に口を開いた。
「絢香今日も雰囲気違うよな。」
「え、あぁ…うん。」
「絢香さん普段は違う雰囲気なんですか?」
「どちらかと言えばもう少しカジュアルな格好だったりするよな?」
「そうだね…。」
「そうなんですかぁ。そちらの絢香さんも見てみたいですけどね私。」
絢香は今日も朝から何枚も服を選んで隼人好みにして来た事をまるで全て二人に見透かされてしまっている様で恥ずかしくなった。
「そうか。うちの会社制服無いけど一応皆きちんとした格好で来てるもんな。」
「はい。他の営業アシスタントの子も私みたいなこんな感じで仕事してるのでこれ以上カジュアルにする勇気が出ないです。したいですけど。」
───ん?今、営業アシスタントとか言わなかった?まさか…。
「あの…桜ちゃんは隼人についてる営業アシスタントなのかな?」
「はい。そうです。頼り無いアシスタントで申し訳無いですが。ははは。」
───やっぱり!?求婚してきたあの子だ。
その瞬間隼人は例のあの子だと絢香に目配せしてきた様に感じたがそれを改めて尋ねる事など出来ずタイミング良く運ばれて来たドリンクで三人は乾杯をする。
「乾杯!」
「はぁ~美味しい~。こんなに美味しいなんて予想以上です。」
目をキラキラと輝かせながら隼人に感動を伝えている桜はまるでリアル少女漫画の主人公だ。
「でしょ?新鮮な感じしない?」
「はいっ。」
「実はこの店さ、絢香に教えてもらったんだ。最初来た時俺もこれ吞んで虜になってさ。」
「そうだったんですね。確かに分かる気がします。これだけ美味しかったら。」
「喜んで貰えて良かったわ…はは。」
絢香はワイングラスを手にしている二人の前で一人だけ生ビールジョッキを傾けゴクゴクとお腹に入れていく。そしてふと桜に聞いてみる。
「桜ちゃんはお酒が好きなの?お酒が好きじゃなきゃこんな年上の私となんかと吞もうと思わないんじゃないのかな~なんて。」
「お酒大好きなんです。それと久保山さんから絢香さんの話聞いてとても面白そうな方だって言っていたので是非会いたいなって。」
───本当は隼人と一緒に居たかっただけよね?お酒は大体の人は好きなんだし。
「へぇ~、そっかぁ。それは光栄だな。桜ちゃんみたいな可愛い子に会いたいなんて言われたの初めてだもん。」
「可愛いだなんてそんな事無いです無いです。」
謙虚にそう言う桜は顔の前で手をフリフリさせている。
「可愛いよ絢香も。」
「なっ、、」
「大学の時噂してたんだぜ。絢香可愛いよなって。」
「凄い!モテるじゃないですか絢香さん。」
「知らないけどそんなの。」
「今言ったからな。けど可愛いと思うぜ俺も。自信持てよ…ってもう分かってるか。すまん。」
「やめて隼人。マジ困るから。」
絢香は隼人の顔の前に手のひらを差し出して褒めてくる隼人をシャットアウトした。
───ん…?
だがその時絢香は斜め横からさっき迄とはまるで様子の異なる無表情とも取れる桜の視線を感じた。
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