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「隼人そんなに引き攣るなよ~。同意を求めた俺が悪かった。でも昔から知ってるけど鈴葉って割と素直で割と清楚で割と良い女なんだよな本当に。」
「失礼よ。割とが多い。鈴葉は凄く良い女よ。」
絢香が低い声とジトッとした目で昇に言う。
「だな。はは…隼人も笑えよほら。」
「あ、あはは…だな。」
「何だよノリ悪いぞ隼人~。」
「そんな事無いけど…。」
───やっぱり変だな…ん?私が鈴葉の話してからじゃない?でも鈴葉の話した所でそれが隼人にとって何の問題も無い訳よね?
「ねぇ隼人。今日何処か具合悪い?」
「悪く無いよ。」
「あ、仕事で疲れてる?」
「それなりには疲れてるけど特に普段と変わりないよ。」
「そう…。」
「何で?」
「ううん、いや、なんかビールの進み遅くない~って思ってさ。」
「毎回こんな感じだぞ俺。昇程強くも無いから。」
「そ、そっか。」
───私の気のせいなのかな…?
「そうだ。なぁ絢香。鈴葉の元彼ってどんな人?俺知らないんだよな。」
「う~ん…私も写真でしか顔見たことないんだけど紳士的で優しいオーラのある男性だったよ。確か一回り以上年上だった。しかもお金持ち。」
「おぉ~スゲ~な。金持ちで紳士的となれば他に言い寄って来る女も沢山居るだろうにどうして鈴葉だったんだ?」
「ちょっと昇、また失礼よ。」
「あっ、、悪りぃ。」
絢香は鈴葉から聞いていた弘道との出会いから別れるに至る迄の経緯をこの信頼出来る二人に全て話をしていった。鈴葉の勤める役所で出会いそこから付き合いが始まり約五年間の付き合いだったが弘道の浮気が発覚し二人は別れた事。
「…で、その元彼が自分のした事を棚に上げて都合良く鈴葉によりを戻したいと言って来ている訳だ。」
「まぁね。話の様子からなんとな~く反省はしてるのは感じ取れたけどね。」
「反省しても駄目だよな?隼人はどう思う?」
「既にアウトだし修復したって長続きしない。一度亀裂が生じた二人は元には戻れない。」
頑とした様子でそしてニコリともしない真顔でそう口を開いた隼人。
───隼人…圧が凄い。怒ってるみたいな感じ。そっか。隼人は一途君だったから余計に許せないのかな弘道さんのした事が。
「そうだよなぁ。見かけによらず恋愛は真面目だったなお前。そのギャップが男から見ても堪らないぜぇ。」
デレッとした顔で隼人にそう言った。
「昇…気持ち悪いぞまた。」
「同感。」
三人は冗談と真面目を混ぜ込みながら鈴葉の話を繰り広げていったのだった。
だが。
ただ一人隼人だけは浮かない表情をしたままビールを煽っていた。
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