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「…好きってどうして?」
「どうしてって何?」
「勿論覚えてると思うけど私と久保山君は体だけの関係だったよね。」
「始まり方なんて問題じゃ無い。」
「それは、、」
───好きだって言ってくれて嬉しいはずなのに私の心がそれを拒否しようとしてしまう。嬉しいはずなのに…苦しくて。
隼人から顔を反らす鈴葉に隼人は続ける。
「お前何から逃げてる?」
「に、逃げて無いよ。」
グイッと顔を戻されて更に近くで話し始める。
「元彼がお前を幸せに出来ると思えない。例え元サヤに戻ったとしてもまた同じ事するぞそう言う男は。」
「…。」
「俺は鈴葉を…鈴葉だけを愛せる。」
───っ。
「迷うな鈴葉。俺の所に来いよ。」
───久保山君…。
「体だけじゃ無い。俺は鈴葉を心底想っている。」
「わ…私は…、、」
息遣いを感じる程の距離で隼人からの嘘偽りの無い真剣な言葉が放たれた。
「こうしている今だって鈴葉に触れたい…抱き締めたいと思って止まない。」
「恥ずかしい…から。」
「やりたいからじゃねぇし、俺だけの鈴葉で居て欲しいって意味。もっと言えば余所の男の目にも入れさせたくは無いから。」
そう言って隼人は直ぐそこにある鈴葉の唇をゆっくりと丁寧に塞いだ。
鈴葉は求められるままに唇を預け隼人の温もりを感じながらそっと目を閉じた。
───────────
ピチチチ…。
珍しく外の電線に雀が止まっている。
───ん…眩しい。あぁ…昨日カーテン閉め忘れたんだ。お風呂にも入らないと。
昨夜隼人に気持ちを打ち明けられた後二人は特別何を話す訳でも無くただ酒を吞みながら長い時間を店で過ごした。隼人は愛しさの余り鈴葉を帰したく無い気持ちが表に現れていたがそこを堪えて店を出ると鈴葉を家迄送る事に決めた。拒む鈴葉だったが隼人の推しに負けて一緒に電車に乗り込みそして家迄鈴葉を送り何もせずに帰って行ったのだった。鈴葉は隼人の告白で思考回路が上手く働かずそのままベッドに倒れ気付けば朝を迎えていたと言う訳だ。
───頭がぼおっとしちゃう。それに目覚めた瞬間から久保山君の顔ばかりが浮かんでるよ。あの顔…あの目は私の心を遠慮無くかき乱してあっと言う間に貴方でいっぱいにしていったのよ。誰も入り込めない位に。
鈴葉は徐に唇を触りまだベッドにゴロンと寝転んだまま自分への隼人の大きすぎる気持ちを受け止めつつそれと同時にふと弘道の事も思い出しなかなかベッドから起き上がれない朝を過ごしたのだった。
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