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愛の重さ
『鈴葉が好きだ───。』
隼人の言葉を思い出しはっとする鈴葉は目の前で記載漏れの客を前に背筋がピンとなった。昨夜は頭が容量オーバーを起こし隼人のくれた答えに鈴葉自身の答えを出せずにいたのだ。
───仕事中に久保山君の事考えちゃ駄目だ。とにかく定時迄仕事に集中しなくちゃ。
鈴葉は目の前の客に気付かれない様にこっそり深く深呼吸し自分に気合いを入れた。
お昼ご飯を済ませ午後の仕事も何とかミス無く終わらせた鈴葉は少しの残業を片付けて真っ直ぐ家へと帰宅する事にした。
───昨日と今日とで頭使い過ぎた。お腹もあんまり空いていないしコンビニでおにぎり買って夕飯はそれで済ませちゃおう。それでゆっくりお風呂に浸かって休もう…。
駅に降り立つと途中にあるコンビニに寄って鮭のおにぎりとグリーンサラダを手に取りレジで会計を済ませた。ビニール袋に入れられたそれらを片手で持ちブラブラとさせながら歩いていく鈴葉は遠目で前を歩くスーツを着た男性が目に入る。そして何処までも同じ道を進んで行くその男性が気になった。
───同じ方向だ。もしかしたら同じアパートの人かな…。
するとその路地を曲がれば自宅があると言う所で案の定曲がったのでやはり同じ住民なのだと確信し鈴葉もその路地を曲がり自宅へと向かったのだが…。
───っ、、
「久保山君っ…弘道さんも…えっ?」
思わず足がピタリと止まりエントランスで側に立つ二人の姿に一瞬息が止まる。
「弘道さんって…まさか鈴葉の、、」
コクリと頷くだけの返事をした。
「あの…それで二人はどうして私の家に来たの?約束もしてないよね?」
「俺は鈴葉に会いに来た。」
隼人が言う。
「俺は鈴葉ともう一度話がしたくて来た。」
そう話す弘道を鋭い目つきで見ている隼人。
「そう…なんだ。」
───どうしよう…二人が偶然一緒に家に来るなんて予想外だったよ。この場はどう対応したら良いの?それに久保山君の顔見たら弘道さんに対して怒ってるみたいだし…。
鈴葉はこの異様な空気にどう対処したら良いものかとあたふたしていると弘道が隼人にこう口を開いた。
「君は鈴葉とはどういった関係の方?」
「俺ですか?」
「そう。」
「友人ですけど。」
「友人か。で、今日は男一人で鈴葉に会いに?」
「はい。」
「鈴葉。男性の友人を家に上げてるのか?」
「え、あの…、、」
「どっかの元彼って人が最近どうやら鈴葉にしつこく言い寄って来ているらしいんでボディーガードですよぉ。」
「はぁ?」
穏やかな弘道が隼人に煽られ普段は見せない苛立った表情に変わった瞬間だった。
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