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「君。久保山君って言うの?」
「そうですけど。」
「久保山君の言う通り鈴葉にしつこく言い寄っている元彼ってのは俺だよ。しつこくは言い過ぎだと思うが。」
「それはすいません。でもやっぱり貴方だったんですね。」
二人は微妙な距離感で話をし始めピリピリした雰囲気が鈴葉にも伝わってくる。
───このままお互い会話してたらもっとヒートアップしていきそう。先ずは私が間に入らないと。
「と、とりあえず二人いっぺんには難しいから先に弘道さんからにするね。私に話あったんでしょ?」
鈴葉はそう言うと隼人から弘道を遠ざけエントランスに常備されてある椅子に座り話をする体勢を整えた。
「それで話って?」
「あぁ…。いきなり来て悪かった。その袋コンビニ寄ったの?」
「うん。夕飯を買ったの。」
「そうか。夕飯まだなら余り長くならない様にしたいんだけど。」
「分かった。話して。」
弘道がこうして突然現れた理由をなんとなく感じ取っていた鈴葉だったのだが例え鈴葉の思っていた事だとしてもその答はまだ出せないままである事に変わりは無かった。
「鈴葉と会ったあの後毎日ずっと考えていた。俺と話した後鈴葉の気持ちに変化はあった?」
「変化…と言うか…うん。考え無くは無かったよ。」
「じゃあ一応少しは考えてくれたんだ。」
鈴葉はコクリと頷いた。
「嬉しいよ俺。ありがとう鈴葉。」
「でも誤解しないでね。弘道さんに浮気された件は別だし弘道さんを受け入れた訳じゃまだ無いから。」
「あぁ…分かってる。」
「だけどその…私達が付き合ってる時私が無意識の内に弘道さんに対して結婚を意識させてしまう様な事をしてしまっていたのかなと思ってしまったの。その圧に弘道さんは悩んでいたのだとしたらごめんなさい。」
「違うよ。それは鈴葉の勘違い。鈴葉の年齢や付き合いの長さを考えて勝手に俺が俺をそう追い込んでしまっただけだから。」
───そうだったの…?
「それで前にも言ったけど俺は鈴葉だけを必要としてるし付き合っていた時以上に大切にする自信がある。約束する。」
───約束って。そんな風に宣言出来るの?
鈴葉は弘道の鈴葉を想う言葉に困惑しそして自分の中に僅かに残る弘道への想い…情が再び蘇って来そうになったその時カツカツとエントランスに足音を響かせこちらに向かって隼人がやって来た。するとガシッと弘道の肩を掴み見下しこう言った。
「そんな口約束してまた鈴葉を裏切るんだろ?」
弘道は隼人を睨み返し肩にある手を振り払った。
「立ち聞きとは失礼だな。」
「聞こえてきたんだよ。」
「まぁ良いよ。けど口約束なんかじゃ無い。俺は鈴葉を愛している。」
───弘道さん…。
弘道の言葉に隼人の眉毛がさらに吊り上がった。
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